富士登山2005/09/10 06:25

夜の富士
先日、御殿場に泊まった。
夜明け前、ふと目が覚めて窓から見ると、富士山が大きく横たわっている。眼前にくっきりとそびえ立つ姿はシルエットだけでも素晴らしく、さらにそれが星々や山頂裾野のあかりで彩られている。
この、夏の夜の富士のあかりを見るたび、小学4年生の時の富士登山を想い出す。祖父が確か喜寿、77歳になるのを記念しての、祖父、父、そして兄と私の一家3代4人の富士登山だった。当時、もちろん今のように5合目あたりまで車道があるはずも無く、2合目吉田口までバスで行き、そこから延々と歩いて登る訳である。夕刻から登り始めて、朝、富士山頂で御来光を仰ごうという計画であった。
大勢が連なって行列で徹夜で登ってゆくのだが、登るにつれ広がってゆく眼下の街の明かりがすばらしく、降るような星々の天蓋と相まって夢幻の世界であった。地面が傾斜しているので地表が大きく傾いて見えるのも面白かった。ただ、普通の運動靴なので、登山道の岩角や冷たさがが直に足裏に伝わってきて我慢できないほど辛かったように思う。結局わたしだけは8合目迄しか登れなかったが、あたりをそして雪渓を茜色に染めてゆく御来光の神々しさは今でも想い出すことができる。
帰りは、須走をズッズッと礫粒をズリながら降りたのだが、高齢の祖父とまだ小学生の孫兄弟の取り合わせが目立ったらしく、登山者達の間でかなり有名になっていたらしい。挨拶は勿論のこと、途中ずいぶん沢山の人から心配されて、雪渓で遊んで兄が怪我をしそうになったのを話しかけられたりした。登山の醍醐味は、その時擦り込まれたのかもしれない。
年齢といい、装備といい、今考えると無謀とも思える登山であったが、夏の夜、間近に富士山を見、登山道や山小屋の明かりを見るたび、鮮烈に想い出す。